不登校についての架空のご相談に院長が答えます!【架空相談】
[2024.09.02]
今回は、不登校になってしまった方からの架空のご相談に、院長がどのように考え、診察をしていくのかといったことをお聞きしました。
※実際のご相談内容ではありません。
中学入学後、突然不登校に。
小学校までは毎日遅刻することなく通っていたAくん。中学1年生になり、突然体のだるさや頭痛などを訴えて朝起きれなくなり、学校を休み始めました。お母さんは今まで元気に通っていて嫌なこともないという感じだったのに、急にどうしたの?と驚きました。
学校の先生の勧めで病院を受診したところ、もともと大人数や、初めての人たちの中に積極的に入っていくことが苦手であること、音に対しての敏感さがあることが分かりました。中学校は小学校に比べて学校の規模も大きく、通う生徒数や先生の数がこれまでに比べて多いことが、Aくんの負担になっているようだったのです。勉強も宿題の量が増えたり、授業スピードが速く、追い付いていないことが分かりました。お母さんからの聞き取りではAくんは小さいころからまじめで、何事にも「ちゃんとやらなきゃ」といった気持ちが強い子だったようです。 そのため、中学校の授業内容が難しくなり、テストでよい点数が取れないことが真面目なAくんには受け入れがたく、Aくんの自己肯定感を下げている可能性もありました。
まずは生活リズムを整えることから。
Aくんの現在の状態や、小さいころの様子などから自閉症スペクトラム症の可能性が考えられました。現在は気持ちが落ち込んでしまい、朝起きれずに夜の就寝時間が遅くなってしまうなど、生活リズムが崩れていることから、睡眠を整えるお薬、気持ちを安定させるお薬を処方されました。初めはほとんど変化が見られず、保護者の方も心配で何度も医師に「このままでいいのか」と確認をしに来ていましたが、まずは学校に行くことよりも、Aくんの気持ちや体の状態を整えることが大事、と考えて悶々としながらも過ごしていました。次第にAくんの表情が明るくなってきたり、少しずつ遊びに出たりと活動するエネルギーが戻ってき始めました。
少しずつ回復。そして…
その後も少しずつ外に遊びに出たり、色々な場所に出かけていくうちに、音楽を聞いたり、演奏することが好きなことに気付きました。Aくんにとって良い成績が取れないことが自己肯定感を下げていたことも考え、医師と相談しながらあまり学力的には無理せずに通える学校の中で好きな音楽がやれる高校を選びました。高校に入学後は、勉強もやりながら軽音部に入り、やりたかった楽器を担当して同級生とも協力しながら楽しくバンド活動をしています。
会津院長解説
今回のケースでは、お子さんが小さいころから真面目で、一生懸命頑張ってきたことが窺えます。学習についても、難しく感じていたのはもしかしたら小学校高学年くらいからあったかもしれませんが、自分の力でなんとかこなすことが出来る、力のあるお子さんのようです。しかし、数年にわたる疲れや頑張りに対して、体が限界を迎えてしまい、体調不良という形で学校に行くことが出来なくなってしまいました。もともと真面目で、一生懸命なお子さんほど、疲れの限界が分からずに頑張ってしまい、無理した結果体の方が悲鳴を上げる、といった状態になりやすいです。このような時はまずは体を休め、しっかりと睡眠や食事をとれる状態に持っていくことが第一だと考えています。
調子が戻ってきたときに、やはり学校に行ってほしいという思いが出てくるのは保護者として当然のことですが、まずは本人にとって無理のない範囲の活動(今回の場合は遊びに行く、学校以外の場所に出かける)といったことから行うことがよいと思います。リハビリのような感じのイメージです。また、「自分の限界を知る」「自分のペースで進んでいく」といったことを社会に出る前に知っていることは大切な事です。どんなペースで学校や社会と付き合うと無理せずにやっていけるのか、といったことを一緒に考えることが出来ればと思います。